栃木県小山市に拠点を構える、寝具メーカーの株式会社コバックス。オリジナルブランドの布団を生産し、独自のECサイト「お布団工房」で自ら販売まで行う。
社長の中條社長にインタビューをした際、社長が「信頼」を大切にし、「睡眠のプロ」としての高いこだわりを持っているとのお話を聞けた。
しかし、中條社長の話す「日本一の寝具メーカー」を目指すためには、社長一人がその想いを強く持っていてもダメなはず。その疑問を中條社長にぶつけると「いい商品は、いい職場から」ということを意識して組織づくりに日々奮闘していると教えてくれた。
そこで今回は、中條社長と、株式会社コバックスのクリエイティブを担当している寝室スタイリストのYukoさん、梱包担当の蓬田貴洋さんにお話を伺った。
「日本一の寝具メーカー」大きな夢を社員と目指す
――「日本一の寝具メーカー」ってすごくキャッチ―でわかりやすい一方で、とても大きな目標な気がするのですが、社員の皆様も認識されているんですか?
中條社長:もちろんです。自分一人がワンマンで「日本一の寝具メーカー」を目指すのは、あまりにも無謀ですからね。社員には、毎週月曜の朝に行なっている朝のミーティングで「日本一の寝具メーカーになるには」「品質の良い商品をお届けするには」一人ひとりがどんなことに意識するべきかということを話してますよ。耳にタコができるぐらい。
――耳にタコができるぐらい…。そんなに何度も訴えているのには狙いがあるんでしょうか?
中條社長:いや、正直なところ社員に伝えるためには、何度も繰り返すという方法しか思い浮かばなくて(笑)。泥臭いかもしれませんが、繰り返し繰り返し話しています。伝わっているのかな……伝わっていてほしいですね。
聞くところによると中條社長は「過干渉に誰かに関わるようなタイプではない」とのこと。そのため、社員が働きやすい職場づくりについては「理想的な形」が社員に伝わっているのか不安に感じることも多いと話してくれた。
「稼ぐため」から「誰かの睡眠を支えるため」へと変化していった仕事観――梱包担当・蓬田さんの場合
今回お話を聞かせてくれたのは、蓬田 貴洋さん。蓬田さんは専門学校を卒業後、パソコンの設定をする会社や、印刷関係の会社での経験を経て、2015年にコバックスに入社。以来、コバックスの梱包業務を担っている。
――コバックスに入社したきっかけはなんですか?
蓬田さん:生まれ育った栃木から離れたくないという想いが強かったので、栃木県内の製造業を軸に転職活動をしていました。その時に、コバックスのホームページを見つけたのですが、すごく凝っていて「職人!」っていう感じがカッコよかったんです。
それで、面接に訪れてみたところ自分が持っていたイメージしていた製造業の現場よりも、すごくきれいで「ここで働いてみたいな」と思いました。
――今はどのようなお仕事をされているのですか?
蓬田さん:出来上がった商品に汚れがないかをチェックして、それを梱包して伝票を確認しながら発送するという仕事をしています。正直、自分が望んでいた職人的な立ち位置ではないですし、入社した当初は悩みも絶えなかったんですけど、4年経って今ではだいぶ慣れました。
――どんなことに悩んだんですか?
蓬田さん:布団って意外と重さがあるので、うちの梱包の仕事は体力的になかなかきついんですよ。あと、やはり要領よく仕事を進めるコツとかは口で聞いてわかるものではないですし、先輩方を見てマネしようと思ってもなかなか簡単にできることではなくて。その勘を養うまではだいぶ苦労しましたね。
そんなある日、現在の中條社長が社長に就任したタイミングで面談をしたときに「もっと本気で仕事に取り組んでほしい」と言われました。
――「本気で取り組んで…」そう言われてどう思ったのでしょうか?
蓬田さん:うーん…正直いうとちょっとムカつきましたね(笑)。自分は自分なりに頑張っているつもりだったので。それが悔しくて「絶対に見返してやるぞ」って思って、次の日からいつもの仕事を、より早く効率的にするにはどうしたら良いのかをめちゃくちゃ考えながら取り組むようにしました。
そしたらね、不思議なことに梱包の仕事そのものにやりがいを覚えるようになったんです。自分の中での仕事観が変わったのもこのころでした。
――どのように仕事観が変化したのですか?
蓬田さん:コバックスに入る前も、入ってからも正直、僕にとって仕事は稼ぐための手段だったんです。でも、社長からコバックスがどんな会社か、お客さまからどのようなことを期待されているかを毎週朝に共有されていくうちに「梱包はお客さまに一番最初に見られる状態をつくる立場であり、コバックスの中で一番最後に商品を見送る立場でもある」と。
大きく言えば、コバックスとお客さまをつなぐ役割なんだなと思うようになりました。そう思うようになってからは「誰かの睡眠を支えるため」にと頑張れるようになり、自分の仕事に誇りを持てるようになりました。
――まさに中條社長がおっしゃっている「寝室から人生をより豊かに」に通じますね。
蓬田さん:そうかもしれませんね。僕、社長が「日本一の寝具メーカーになる」って発言されたのを聞いたときに、「目指しているところや見ているところが、すごく上の方なんだな」と驚いたんですよ。正直それまでそんなこと考えて仕事したことがなかったので。
社長はよく、「お布団工房」でいただいた口コミを僕たち社員に共有してくれます。良いものだけではなく悪いものも、次に活かすために真摯に受け止める姿勢が伝わってきます。
だから僕も、お客さまから1つでも多くのありがとうを集めるために、頑張りたい。そうやって1つの仕事を積み重ねることで社長がお話する「日本一の寝具メーカー」に近づけていけるように貢献できればなと思います。
「いい商品は、いい職場づくりから」中條社長が日々、社員に対して抱いている想い
「日本一の寝具メーカー」を社員とともに目指したいと感じている中條社長。社員一人ひとりに対しては、どのような思いを抱き、どのような職場環境にしたいと感じているのだろうか。
――社員の方との関係性や、組織づくりにおけるこだわりはありますか?
中條社長:「信頼」が何よりも大切ということは繰り返しお話しましたが、それはお客さまや取引先さまだけに言えることではありません。
僕は「いい商品は、いい職場から生まれる」と考えているので、社員が居心地の良さを感じる、かつ家族や友達に自慢できるような働きがいのある職場づくりをするにはどうしたらよいかということは常に考えています。
――心理的安全性の高い職場…。例えば20名ほどの職場の場合、一人ひとりの人間関係が全体に影響を与えてしまうイメージがあるのですが、具体的にどんなことをしているのでしょうか?
中條社長:ひとつは、毎朝8時から30分間の掃除をしてもらっています。これはただ掃除をするための時間ではなくて、毎週担当の場所とそのメンバーを変えて3人1組になるようにしていて、雑談を推奨しているんですね。
そうすることで、持ち場の人だけでうちうちに盛り上がるような職場ではなく、自分の業務内容を超えてコミュニケーションが取りやすいような職場づくりを…と思ってやっています。これもちゃんと意味合いが伝わっていればいいんですけど、不安ですね(笑)。
心理的安全性の高い職場づくりがしたい、その想いをもとに“朝活タイム”として、掃除の時間を導入したという中條社長。
聞くところによると、このチームは毎週、チーム名を考えるところから始まり、いわば会話するきっかけを作っているとのことなのだが、その思いや効果を社員はどのように感じているのだろう。
蓬田さんに朝活タイムについてお伺いすると、声を弾ませながら次のように答えてくれた。
蓬田さん:別の持ち場担当の方とも話せるきっかけづくりとして機能しているのでありがたいですね。僕、もともと人見知りなこともあって、入社した当初は検品担当として「汚れがありました」ということを伝えに行くのが、本当に億劫だったんですよ。話したことのない先輩に、言いづらいことを言いに行くのは気が重いものです。
でも、朝活タイムが導入されてからは気楽に行けるようになりましたね。必要以上にびくびくしなくなりましたし、フランクに伝えられるようになりました。
蓬田さん:それに1チーム3人ぐらいというのもいいんですよ。4人だったら二手に分かれてしまう、あまりに多すぎるとすごく話す人と全くしゃべられない人になってしまう、3人だとそれが起こらないんです。人見知りの僕にはありがたいことだらけですね。
また、“家族や友人に誇れる仕事”ということについては、同社で寝室スタイリストを務めているYukoさんも感じているという。
世界観を発信し、お客さまとコバックスをつなぐ――寝室スタイリスト・Yukoさんの場合
もともと東京のアパレル企業で働いていたYukoさんは、高校卒業後、美術系の大学に進学。夫の中條社長が会社を継いだことをきっかけに、コバックスに入社した。
――寝室スタイリストってどんな仕事なんでしょうか?
Yukoさん:寝室スタイリストは、ファッションを楽しむように、寝室も季節や気分でスタイリングすることを提案する仕事です。「お布団工房マガジン」などに掲載するビジュアルを通して、私たちの商品を魅力的に表現することを担当しています。
――新しい…。寝室スタイリストになった理由はなぜなんでしょう?
Yukoさん:社長の妻というと、どうしても経理業務のイメージとかが強くないですか?でも、私本当に数字が得意じゃなくて、向いていなかったんですよ。
それでどうしようって悩んでいたときに「もっとコバックスの魅力を伝えるような仕事。ブランディングに携わるようなことに挑戦してみない?」と言われて、それなら今までの経験を少しは活かせるかもしれないと思い挑戦することにしたんです。
――コバックスの世界観を伝えるために気をつけていることがあれば教えてください。
Yukoさん:コバックスの強みは、質の良いものづくりにこだわっている“工房感”と、寝室スタイリングという“お気に入りの寝室”のご提案を併せ持っていることだと思っています。
だから、ただ素敵な寝室というだけでなく作り手の想いを載せるような仕事をしたいなと思っていますね。
また、その世界観を発信するのはお客さまのためだけではありません。社員たちも自分の職場が素敵だって言われたら、嬉しくないですか?自分から会社の冊子やサイトを見せたくなるような、そんなきっかけを作りたいんです。
――それはとても重要ですね。就任当初も今もクリエイティブに携わるお仕事をしているのはYukoさんだけとお伺いしました。
Yukoさん:そうなんですよ。ファッションについてはある程度、勉強も経験もあるんですけど、インテリア、しかも寝室に特化したインテリアだなんて未経験ですからトライ&エラーを繰り返しながらやっていますね。カメラマンさんや社長と「どう思う?」と話しながら、コーディネートを組んでをしっくりくるまで繰り返しています。
Yukoさん:子育てをしながら社内で一人のポジションを担う難しさも感じています。でも、本当にうちの会社っていい人ばかりだし、当たり前のように助けてくれるんですよ。だから、しんどいとは思わないんです。
職場の人たちがサポートしてくれるおかげもあって、自分らしく働いているよと胸を張って言えるんです。自分のクリエイティブがコバックスとお客さまをつなぐ重要な役割を担っていますから、もっともっと頑張って「日本一の寝具メーカー」に近づけたらなと思います。
3名の方にお話を聞き、それぞれの仕事へのやりがいを持って活動していると感じた今回の取材。最後にYukoさんと蓬田さんに、ご自身の仕事ぶりは100点満点中何点かと伺った。
Yukoさん:50点ですかね~。やっぱり「日本一の寝具メーカー」を目指すためには、まだまだやれること、もっとやるべきことがあるというのは自覚しているので。子どもたちがもう少し大きくなって、時間を割けるようになったら、うちの商品とお客さまをつなぐような仕掛けをもっとたくさん打ちたいです。
蓬田さん:70点か80点くらいですかね。梱包としての仕事はやっと一人前にできるようになってきました。でも、うちの商品を誰が使っても満足できるか、商品を受け取った方全員に喜んでいただけているかと言われたら、まだ改善の余地があることはお客さまからの評価を見ても思うんです。「日本一の寝具メーカー」を目指すなら、そこを100%にしなくてはいけませんから、もっともっと高みを目指したいです。
それぞれが自分たちの目標を持ち、社員が一丸となって「日本一の寝具メーカー」を目指しているコバックス株式会社。地道な発信を続ける社長のそばには、自分の仕事を誇りに思い全うしようと努力を続ける社員のみなさんがいた。
お問い合わせ先
株式会社コバックス 中條宛 本社:栃木県小山市 西黒田92 メール:info@kk-covax.co.jp お布団工房サイト:http://www.e-futon-kobo.com/ |
制作:小山市 株式会社kaettara
撮影:BremenDesign