栃木県全25市町にひとつずつ焦点を当てて開催する「栃木ゆかりのみオンライン」。今回は栃木県那須郡に属する「那珂川町」の会でのやりとりの一部をご紹介します。

いくつか記事をお届けしている栃木ゆかりのみオンラインのうち、実は筆者の初めての参加がこの那珂川町でした。

ゆかりのない町に参加しても楽しいのかな?と、最初は半信半疑でしたが、町の人からうかがう地域のお話は、想像以上に発見が多くて面白かったです

その地域の人にとっての「当たり前」の情報は、初めて聞く人にとっては刺激的で。同じ県なのに、地域によって特色が全く違うし知らないことがたくさんあるんだな~と、栃木県に対して興味がより湧いてきました。

よく知らない地域だから……と参加を迷っている方へ。むしろ知らない方が充実した時間になるかもしれません。自分の地元の地域と比べたりしてみると、また違った発見があると思います!ぜひこれからのゆかりのみに参加してみてくださいね。

当日のおもな参加者のみなさん

たかねえさん:那珂川町(旧馬頭町)出身。那珂川町で知らない人はいない(?)おネエ。職業は司会者。


大塚さん:宇都宮市出身のテレビマン。番組制作に役立つ情報が知りたい。


大島さん:藤岡町出身。独自の視点で地域の人も気づかない魅力に気づかせるのが得意。


黒田さん:小山市出身。ビジネスマンの視点で地域の産業や経済に切り込む。


屋代さん:那珂川町出身。地元民として率直な意見を提供。


筆者:壬生町出身。ゆかりのみに初めて参加。

こんにちは!ゆかりのみ幹事の永井彩華です。今日は那珂川町の露久保さんにお越しいただきました!

那珂川町役場の露久保です。この町に生まれ育ち、大学卒業後に合併前の馬頭町役場に入庁しました。現在は企画財政課というところで移住や定住に関わっています。

よっ!切り込み隊長!みなさん、那珂川町役場の素敵なスターはじめちゃんよ。

たかねえにゆかりのみのことを聞いておもしろい取り組みだなと。よろしくお願いします。

たかねえにはたびたび栃木ゆかりのみに来てもらっていて、那珂川町でゆかりのみをやりたいと言ったら「じゃあはじめちゃんしかいない!」と紹介してくれました。露久保さん、早速ですが那珂川町について教えていただけますか?

はい、まず那珂川町の概要についてお話しします。那珂川町は、2005年10月に那須郡の馬頭町と小川町が合併して誕生しました。名前の由来は町の真ん中を流れている那珂川から。合併後も町のままなのは那珂川町だけです。危うく村になるところでした(笑)。

面積は約200平方キロメートルで町としては大きいほうですね。人口はだいたい16000人弱、人が減っていて消滅可能性都市に指定されてしまいました。

私の出身は壬生町なんですが(前記事参照)、2倍以上の面積です。

だいたい町の6割が山ですが(笑)。

那珂川町のみどころ

そんな那珂川町ですが、観光地や見所もたくさんあるんですよ。たとえば那珂川町には美術館があります。それも3つも。ひとつは『馬頭広茂美術館』。新国立競技場を設計した建築家・隈研吾さんの設計で、とても素敵な建物です。

広重って歌川広重ですよね?まさか栃木で見られるとは知りませんでした。

馬頭広重美術館

馬頭広重美術館(露久保さん撮影)

平屋の建物がとても素敵ですね!

もうひとつは『いわむらかずお絵本の丘美術館』。「14ひきのシリーズ」が有名ですね。絵本の世界と里山の自然が同時に楽しめる場所ということで、那珂川町が選ばれました。

最後のひとつは『もうひとつの美術館』。廃校になった小学校を使い、ハンディキャップを持つ人の芸術活動をサポートしています。

そのほかにも子山上神社(とりのこさんしょうじんじゃ)という神社は、フクロウ(不苦労)の大きなモニュメントがあって縁起がよく、宝くじが当たると有名な神社です。神社の中央がちょうど栃木県と茨城県の県境になっていて、県境をまたいで写真を撮る人もいますね。

結構テレビにも取り上げられていますよね。

鷲子山上神社

初夏には紫陽花がきれいな鷲子山上神社(露久保さん撮影)

★馬頭広重美術館http://www.hiroshige.bato.tochigi.jp/
★いわむらかずお絵本の丘美術館:http://ehonnooka.com/
★もうひとつの美術館:http://www.mobmuseum.org/
★鷲子山上神社:http://www.torinokosan.com/

皆さん、「小砂焼き(こいさごやき)」はご存じですか?

下野かるた(※)に出てきました! ※栃木県の郷土かるた

そうです!小砂という地域があって、そこで作っている焼き物です。この小砂という地域は、この小砂焼きなどの地域資源が認められ、栃木県で初めて「日本で最も美しい村」連合に加入しました。小砂の里山は「芸術の森」とよばれ、若いアーティストも移り住んできているんですよ。

栃木にそんなところがあるなんて知らなかったです。

日本で最も美しい村 栃木県那珂川町小砂https://utsukushii-mura.jp/map/koisago/

 

観光に欠かせない宿泊施設ももちろんあります。「飯塚邸」は国の重要文化財に指定されている100年以上前の建築で、きれいにリノベーションされていてホテルとして泊まれるんですよ。

国の重要文化財に泊まれるんですか?素敵!

かつての蔵や書庫にも泊まれるので楽しいですよ。

飯塚邸飯塚邸
飯塚邸

飯塚邸(露久保さん撮影)

飯塚邸https://iizukatei.ohtawaragt.co.jp/

 

食べ物も美味しいものがたくさんあります。たとえば、那珂川は天然鮎の遡上が日本一といわれている鮎釣りのメッカなんです。やな漁という100年以上続く伝統漁法で、鮎の漁獲量日本一を誇っています。

★あゆの里 矢沢のヤナhttps://www.tochigiji.or.jp/gourmet/3931/

 

那珂川町は温泉も「美人の湯」として有名ですが、温泉水を利用して「温泉トラフグ」を育てて特産品にしています。那珂川町の温泉の源泉には塩分が含まれていて、この温泉水で海の魚も育てられるのでは?というアイディアで試しに高級魚のトラフグを育ててみたところ、養殖に成功したんです。

その後、廃校になった学校の教室やプールを再利用して温泉トラフグを育て、那珂川町の一大産業に成長しました。

温泉トラフグの刺身

温泉トラフグの刺身(露久保さん撮影)


林屋さんっていう、泣く子も黙る美味しい川魚料理屋さんもあるわよ。

温泉トラフグhttp://www.ganso-onsentorahugu.com/林屋川魚店https://www.nasu-hayashiya.co.jp/

 

また、廃校になった中学校は発電所にも利用されていて、さらにそのボイラーの余熱を使ってマンゴーコーヒーを栽培しています。

栃木でマンゴーとコーヒーですか!

マンゴーのためだけ、コーヒーのためだけに施設を作るとなるととても採算が合わないんですが、ボイラーの熱を使うことで可能になっています。

一時期はコーヒーの摘み取り体験もしていたんですよ。『あかねてらす』さんでは、那珂川町でとれたマンゴーやコーヒーを味わうことができます。

すごい~!日本にいながら日本じゃできないような体験ができますね。南国のような。

地元なのにマンゴーは食べたことなかったです。

も~~、地元の人も知らないなんてもったいない!ちゃんと宣伝しなくちゃ!

確かに……!

那珂川町産マンゴーとコーヒー豆

那珂川町産マンゴーとコーヒー豆(露久保さん撮影)

★あかねてらすFacebookhttps://www.facebook.com/akaneterrace/

那珂川町の産業

那珂川町の主要な産業って何でしょうか?

基幹産業は農業ですね。有機農家が多くて、新たに農家を始めたいという若い方も多いです。隣の那須烏山市には、農業の担い手を育てる「帰農志塾」があるので、そこに行くために那珂川町に住むという人もいます。

大きい工場もいくつかあって、那珂川町だけでなく他の市町から通っている人もいます。逆に宇都宮のホンダの工場に勤めている方が那珂川町に住むというケースもありますね。那珂川町から行った方が、渋滞が少ないという理由もあるようです。

あと、那珂川町にはドラムヘッドの国内唯一のメーカーであるアサプラさんという会社があります。奥田民生さんが工場に来たことがあるとか。アイディアに富んだ企業で、最近ではその技術でフェイスシールドを作って病院に寄贈したそうですよ。

アサプラさんは以前テレビに取り上げられていましたね。

★株式会社アサプラhttp://www.asapura.com/

那珂川町への移住・定住

もっとたくさんの人に那珂川町に住んでもらえるように、さまざまな支援もしています。『高手(たかで)の里』というプロジェクトでは、150坪以上の町有地を無償で20年間お貸ししています。そのほか、定住促進奨励金などの優遇措置も受けられますよ。

無償貸与って、すごいですね。

いいな~。独身はだめなの?

残念ながら一世帯2人以上、65歳以下などの条件があるんです。でも、まだあまり入居者がいないんですよね……。

こんなにいろんな支援があるってこと、知られてないんじゃない?

確かに。全体として宣伝が課題ですね。

この高手の里のなかにモデルハウスを作り、移住を考えている人がおためしで田舎暮らしを体験できるようにもしました。3日間~60日以内で、一日あたり1000円で借りられます。

今はどういう方が移住しているんですか?

県内の人が多いです。売買と賃貸含めて、県外の人は2割くらいですね。

県外の人にも上手に宣伝しなくちゃね!

そのほか、那珂川町の空き家を探す空き家バンクの創設や、『エミナール那珂川』という子育て支援住宅の建設も実現しました。エミナール那珂川には保育士が常駐する子育て支援施設も併設していて、小学生以下のお子さんがいる世帯が入居できます。

知ってみるとすごく住みやすそうですね!

★農ある田舎暮らし 高手の里https://www.sosei-nakagawa.com/takadenosato/#nakagawa_area
★エミナール那珂川https://www.mast-net.jp/tochigi/area/09411/16265000

では、最後に参加者の皆さんから感想をお願いします!

那珂川町は結構テレビに取り上げられていて知ってることが多いと思ってましたが、知らなかったこともたくさんあって知れてよかったです。またテレビでも取り上げられたらと思います。

温泉トラフグにマンゴーやコーヒーなど、町にある資源をうまく使っていてびっくりしました

マンゴーもコーヒーも、好きな人はすごく好きですよね。私も好きなのでコーヒー摘み体験ができると聞いたらすぐ参加すると思います。そういう人たちに情報さえ伝われば、きっともっとたくさんの人が那珂川町に来てくれるんじゃないかなと思いました。

そうよ、やっぱり宣伝よ!はじめちゃん、頑張って!!!

頑張ります!町の外の方に意見をもらえるのはすごく貴重な機会でした。那珂川町がいろいろな挑戦をしていること、まずは町の人に、そして町の外の人にも知ってもらえるようにしなくちゃいけないですね。楽しかったです。ありがとうございました。

集合写真

最後は恒例の集合写真で!

筆者あとがき

参加者の皆さんは会の最初の段階では、那珂川町についてあまり知らない状態でした。それが90分のイベントが終わる頃にはすっかり自分事になり、那珂川町に貢献したい!と、マンゴーのPR方法などを考えだす方もいました。

限られた時間で共有できた情報は一部ではありますが、露久保さんご協力のもと那珂川町の魅力に触れることができて、参加者にとっても新たな発見があり、次につながる時間になったようです。

私も情勢が落ち着いたら、実際に那珂川町に行ってみたい!と思いました。この日をきっかけに、那珂川町と接点を持つ人たちが増えていく予感です。