栃木県小山市では令和2年度から、女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち小山市・関係人口創出事業を行っています。その2年間の事業成果と今後の展望について共有するフォーラムを、令和4年3月17日(木)19:30~21:00にオンラインにて行いました。

▽イベントページがこちら
女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち小山市・成果報告フォーラム〜地域で暮らす女性たちと官民が連携してつくる「ワガママが言えるまちづくり」の可能性〜

本事業では、全国的に課題である、女性たちの地方流出を解決することを目的に、女性たちが暮らし続けたいと思う持続可能なまちづくりを推進する関係人口創出事業として、実践を重ねてきました。

結果的に、本事業で行った取材をきっかけに中間支援組織としてNPOが立ち上がり、連携したいという企業たちが集まってデジタルを活用した課題解決の方法を探っている状態になっています。地域での新たな挑戦がはじまる土壌ができてきました。

本フォーラムでは小山市長の浅野氏とデジタル大臣である牧島氏からのビデオメッセージを放送したのち、受託事業者である株式会社kaettaraの永井による成果発表と今後の展望、そして事業関係者とのトークセッションと続きます。

まちづくりにおける女性活躍とDXの推進を実践する自治体を増やしていくこと、さらに小山市で取り組みを加速させていくことを目的として開催しました。

本記事では、事業を実施した背景と2年間で行ってきた主な取り組みの概要をご紹介します。

実施背景

栃木県小山市は人口が約167,000人。栃木県の中で2番目に人口が多いまちです。工業が主力産業なこと、大企業の拠点が集積する等の背景もあり、転勤などが理由で毎年1万人が転出入するという特徴があります。

小山市の取り組みで特徴的なことのひとつが、市として女性活躍に力を入れてきた点です。例えば、市役所内における係長以上の管理監督者に占める女性の割合が令和2年度は31.0%、管理職に占める女性の割合が25.0%で、これからも積極的に女性の登用を推進していく方針です。そして市内に目を向けると、女性たちが主体的に起こした地域活動が多数行われてきています。挑戦を応援し合うコミュニティも多数あり「子育てしながら起業しやすいまち」という声が市民から聞こえてくるほどに、新しい取り組みを起こす機運ができつつあります。

一方で小山市として課題に挙げられるのは、女性たちの首都圏への流出が顕著に多いという点です。特に20~24歳の女性たちが進学や就職を機に小山市を出て、そのまま地元に帰ってこないという現状があります。小山市として産業・就労、政策・方針決定過程への女性の参画や活躍はさらに推進していくべきと考え、総合計画にも目標を据えています。

活動概要

以上の背景を踏まえ、地域で活動している女性たちと連携しながら、女性たちが暮らし続けたいまちづくりのために必要なアクションについて検討し実践してきました。主な内容をご紹介します。

小山市で活躍する女性たちの可視化と、チームづくり

はじめに行ったのは、小山市役所の管理職を担う女性のみなさんと、市内で様々な活動を起こし、地域や地元企業とのコミュニティのハブとなっている女性たちを取材することです。小山市で今後必要な挑戦について議論を行い、新たな取り組みへの協力体制の構築を行いました。

また、これがきっかけとなり、地域で暮らし、様々な活動をしている女性たちが中心となって結成した中間支援組織としてNPO法人おやまワガママLabが令和3年9月に設立されました。地域住民を巻き込んだ取り組みにつなげること、これまで点と点で活動されていた女性たちが連携し、より活動を発展しやすい仕組みにもつながっています。理念に共感した多様な方々が集まり、現在は25名程度の組織となっています。

▽参考:
NPO法人おやまワガママLab・ホームページ

おやまワガママLabの独自の取り組みとして毎月3日に「ワガママ会議」と銘打ったイベントを開催しています。小山市で暮らす人たちが日々の生活の中であきらめていることや我慢していること(これをワガママと定義している)を共有し合うことで、地域の課題を可視化する場です。これまで課題や困難を感じていても声をあげる機会が無かった人たちが参加できるように、時間帯や場所、他のコミュニティとの連携、広報方法などを毎回工夫して実施し、データを蓄積しています。

小山市の課題解決に取り組みたい企業を募る

小山市の課題解決に挑戦したい企業を、関係人口として募るイベントを継続的に実施しています。現在までに連携を希望する企業が20社程度集まり、各社のアセットを小山市でどう活かすことができるかの協議を、行政や地元企業・住民たちと共に行っています。

さらに、デジタル人材を育成し、民間企業への就業(完全リモートワークも含む)を斡旋することに強みのあるModis株式会社のフィールドワークを受け入れ、継続的に連携して地域の女性たちを対象としたデジタル人材育成の推進を検討しています。女性たちが新たなスキルを身に付けるため、コミュニティで学び合い、支え合い、実際に就業することが可能な仕組みづくりができるのではという可能性を探り、市民へのヒアリングを重ねています。

また、Modis株式会社は本フィールドワークをきっかけに調査活動を継続的に行い、本事業へ企業版ふるさと納税の寄付を実施いただきました。

▽参考
・企業版ふるさと納税(地方創生応援税制) 小山市ホームページより
https://www.city.oyama.tochigi.jp/soshiki/3/210351.html
・フィールドワーク実施様子のレポート記事
エンジニアから見えた小山市の可能性とは ―女性デジタル人材育成をテーマに調査フィールドワークを実施―

地域で暮らす人たちの困りごとを解決するアプリをつくるイベント実施

マサチューセッツ工科大学が開発した、誰でもアプリが作れるソフトウェア「MIT App Inventor」を活用して、地域の課題を解決するためのアプリをつくる体験会を、MIT公認・教育モバイルコンピューティングマスタートレーナーの石原氏の協力のもと行いました。

小山市に暮らす母子4組が参加。3時間でゼロから学び、「地域で暮らす一人暮らしのお年寄りの困りごとを解決するアプリ」を参加者の視点で企画し、開発まで行いました。デジタルを活用することは、誰かの生活の役に立つという体感をすることによりデジタルに親しみを持てる機会となりました。

▽レポート記事
地域で暮らす女性たちが、地域課題の解決につながるスマートフォンアプリ開発に挑戦!(全2回)
MIT App Inventor講義編
MIT App Inventor体験編レポート「地域の一人暮らしのお年寄りの困りごとを解決するアプリを、親子でつくってみよう」

以上の取り組みから、官民が連携して地域課題を解決する取り組みを行うこと、そして地域で暮らす女性たちがデジタルに対して親しみを持ち、学び、活用する場づくりを行ってきました。それが、女性たちにとって暮らし続けたいまちづくりに向けた新たな挑戦につながると考えています。

また、本事業ビジョンに共感し、継続的に小山市に関わり挑戦していきたいという企業や個人との取り組みの事例も多数できており、地域づくりを担う本質的な関係人口づくりにもつながっております。

当フォーラムではそういった事業成果や学び、今後の展望を発信しました。次回、フォーラムの開催レポートを公開いたします。

フォーラム概要

女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち小山市・成果報告フォーラム〜地域で暮らす女性たちと官民が連携してつくる「ワガママが言えるまちづくり」の可能性〜
イベントページ:https://peatix.com/event/3181539/view

■登壇者
▽ビデオメッセージ
デジタル大臣、行政改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)
牧島 かれん氏
1976年11月1日神奈川県生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業、米国ジョージワシントン大学ポリティカルマネージメント大学院修了(修士号取得)、国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程修了(博士号取得)。2012年衆議院選挙において初当選。内閣府大臣政務官(地方創生・金融・防災担当)、自由民主党青年局長、同党デジタル社会推進特別委員会事務局長などを歴任。2021年10月 デジタル大臣、行政改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)就任。

▽事業成果報告
・株式会社kaettara 代表取締役
永井 彩華 氏

▽司会/モデレーター 
・一般社団法人Society5.0・地方創生推進機構 代表理事/ボノ株式会社 取締役
谷津 孝啓 氏

▽トークセッションゲスト
・NPO法人おやまワガママLab 代表理事
荒川 留美 氏

・マサチューセッツ工科大学認定
教育モバイルコンピューティング マスタートレーナー
石原 正雄 氏

・株式会社エス・ティライン 代表取締役
佐藤 晴美 氏

・Modis株式会社 イノベーション&キャリア開発本部 未来創造部
末吉 廣美 氏

■全体プログラム
1.オープニング
2.小山市長 浅野正富氏より挨拶
3.デジタル大臣 牧島かれん氏よりビデオメッセージ
4.女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち小山市・成果報告
5.トークセッション①
「地域で暮らす女性たちのワガママからはじまる、デジタルを活用した課題解決への挑戦」
6.トークセッション②
「女性デジタル人材育成が推進された未来の小山市を考える」
7.クロージング

主催:小山市/受託事業者:株式会社kaettara