「女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち」に取り組んでいる栃木県小山市。小山市の課題解決に関わりたい市外の企業を、令和2年度から関係人口として募集を行ってきた。

多様なアセットをお持ちの複数の企業から、小山市との連携に興味を持っていただけたなかで、特に本事業に共感してくださったModis株式会社と共に市内調査フィールドワークを実施。

フィールドワークに参画されたModis株式会社(以下、Modis社と表記)は世界最大の人材会社アデコグループに所属。様々な専門性を持つエンジニアたちが8,400人在籍している。

Modis社は2019年から「地方創生VI」という、エンジニアたちが地方で起こっているリアルを体感し、テクノロジーを活用した地域課題に取り組むプロジェクトを行っている。専門性の違う7名のエンジニアチームが行政や住民の方々へのヒアリングを重ねて、小山市の現状や課題・可能性を深掘りし、まちのありたい未来を創造していく取り組みだ。

エンジニアの視点で様々な調査やヒアリングを重ねられ、結果的に本事業など小山市の複数の事業への企業版ふるさと納税も実施してくださった。

本記事では、小山市でModis社と行った一連の取り組みをご紹介したい。

令和3年6月:調査・キックオフ

まずエンジニアたちは、小山市と直接コンタクトをとる前に市に関するデータの調査を行っていった。第8次小山市総合計画をはじめ、今回のテーマである「女性活躍」や「DX」に関する関連データを中心に、公開情報を中心にリサーチ。またあわせて国の政策と照らし合わせる。

特に注目したのは、小山市の女性たちの就業意欲や働き方の現状についてだった。小山市で暮らす女性たちの就労意欲が高まっているというデータがあったが、一方で現状はそんな女性たちの希望を叶えられる就労環境が小山市にあるのか。実際に聞いてみたいことを整理していく。

小山市男女共同参画基本計画2021~2025 P15より抜粋

また、オンラインにて本事業の担当課であるシティプロモーション課の皆様との顔合わせを行い、事前に調べたことを踏まえながらヒアリングを行った。

7月:オンライン視察(行政向けヒアリング)

本来なら現地に足を運ぶ予定であったが、コロナウイルス感染者が拡大傾向の時期であったためオンラインにて視察を行った。

視察では今回のテーマに親和性の高い「工業振興課」「人権・男女共同参画課」「生涯学習課」の皆様にお話を伺った。

小山市は人口が約167,000人のまちで、首都圏からも近い距離にある。また主力産業は工業だ。現状や多くの可能性も知る機会となったが、課題も多く挙げられた。

例えば、女性が希望する就職先が少なく、若者たちは進学や就職をきっかけに流出する一方で市内企業では人手不足であるなど。市内の就業環境に関することや、テレワークで働く人を増やすための取り組みを行っているが就労に結び付けることに難しさを感じているなど、実際に行われていること、それに対しての結果などを教えていただいた。

エンジニアたちは伺った話を整理し、さらにリサーチを進めて継続的に職員の皆様との意見交換を行っていった。

9月:オンライン・フィールドワーク(市民の皆様への取材)

次は、小山市で事業をされている6名の皆様にお話を伺った。現地で行おうと調整していたが、情勢を鑑みてオンラインで行った。

<ご協力いただいた皆様>
・株式会社エス・ティライン 佐藤晴美 氏
・アクリーグ株式会社 磯山貴志 氏
・桜小町MAO 荒川留美 氏
・一般社団法人カゼトツチ 古河大輔氏 藤本尚彦氏
・小山鋼材株式会社 稲葉健太 氏

人材研修、製造業、子育て、教育、場づくり、学生支援、システム開発、雇用創出など、ご協力いただいた皆様は多岐にわたる業種業界に携われている。

それぞれ取り組まれていることや、それを通じて見える小山市についてのお話を伺った。それをもとにエンジニアたちは取材記事を執筆。さらに得た内容を整理しながら、小山市に関する解像度を高められるよう努めた。

また、取材をきっかけに了承いただいた方に関しては個別にSNSでつながり、小山市を共に良くしたいと考えている一個人として、継続的にコミュニケーションをとらせていただいた。

どうしても「企業から取材を受ける」となると、身構えてしまうものである。取材という場で伺えることはごく一部に過ぎず、実際に取材相手が企画されているイベントへ参加したり、携われているサービスを利用したり、何かできることで貢献したりと、個人としてコミュニケーションを重ねていくことで少しずつ関係性を育てていくことが必要だ。

企業が地域に関わり、官民が連携して地域の課題解決を行ううえで肝となることのひとつが、市民の方々との信頼関係の構築である。特別なアセットがあったとしても、地域に受け入れられる形でないと本質的な成果は出せない。エンジニアの皆様は一個人としてコミュニケーションを重ね、小山市への理解を深めようと努めていった。

10月:現地フィールドワーク(市民の皆様向け取材)

感染症対策を行いながら、2泊3日で小山市にてフィールドワークを行った。

おやま~るでのオリエンテーションの様子

チームは2手に分かれて、11名の皆様にお話を伺った。

<ご協力いただいた皆様>
・西堀酒造株式会社 専務 西堀哲也 氏
・ハローワークおやま 門井健太 氏
・小山商工会議所 関泰光 氏
・栃木県立小山高等学校 田中正樹 氏
・池貝正一商店 池貝孝雄 氏
・Sunフーズ株式会社 栗原宏 氏
・株式会社食メディア 牧田泰子 氏
・地域おこし協力隊 横山賢 氏
・サウンドテック高橋電機 高橋昭 氏
・おーラジ 局長代理 加藤善 氏
・わたらせ未来基金 伴瀬 恭子 氏

オンラインでお話を伺うことは可能ではあるが、足を運ぶことで得られる情報はさらに幅広くなる。市民の皆様にお会いする目的以外でも、小山市の各所を見て回らせていただいた。

最終日には、小山市役所内への発表会を行う。小山市のことを知り、エンジニアの視点で感じる小山市の課題や可能性について整理していった。

Modis社は特に、小山市における女性デジタル人材育成を軸に調査をしてくださった。背景としては、デジタル人材が2030年には79万人が不足すると予想されており、且つコロナ禍で失業したのは女性たちに多く、国は女性たち向けにリスキリングとしてエンジニア育成に力を入れるとしている。

小山市で暮らす女性たちの就業やデジタルに関する意識、デジタル人材の現段階のニーズ、求人全般に関する調査をはじめ、小山市の歴史や文化に触れたことなど、これまで触れてこられた情報をまとめていただいた。

調査にご協力いただいた市民の方の中には、実際にエンジニアを目指してプログラミングを学ぼうとされた方もいて、学び続ける一歩を踏み出すことのハードルの高さについて生の声を聞かせていただいた。

一方で、小山市では活発な女性を中心としたコミュニティが多数存在することが分かった。女性たちが新しいスキルを学ぶためには、時間を捻出し学び続けること、そのスキルを活かして就業などにつなげることは幾重にもハードルがあると考えられる。

コミュニティで支え合い、学び合い、学んだ後もサポートし合える仕組みを、小山市の実情に合った形でつくれるのではないか。そんな可能性を感じる発表となった。

11月~12月:追加調査

これまで出会った皆様と継続的にコミュニケーションをとっていき、ここまでの取材で得た情報をさらに深めていった。また、プライベートで小山市に足を運び、イベントや勉強会に参加したり、観光したり、それぞれで体感していただいた。

令和4年1月:年間報告会

Modis社は全国16エリアで地方創生VIに取り組んでいる。他のエリアの職員の皆様、Modis社のエンジニアの皆様で合同の成果発表会を行った。各チーム地域のありたい姿に向けて、デジタルを活用してつくっていきたい未来について発表し合い、学びを得た時間となった。

小山市チームがテーマとして据えたのが「女性活躍×デジタル人材 コミュニティから広がる小山市の可能性」。取り組まれた結果や今後の展望について発表された。

コロナウイルスの影響で、なかなか小山市に足を運べなかったという背景もあり、限られた期間でModis社の皆様は熱心に小山市のことを知ろうと努力をしてくださった。地方創生VI活動として、継続的に調査を進めていかれる方針だ。

Modis株式会社 会社概要:
⼈財サービスのグローバルリーダーである Adecco Group の⼀員で、約 8,400 名のエンジニアとコンサルタントを擁する、国内トップクラス規模のテクノロジーソリューション事業者です。IT とエンジニアリングにおける最先端のテクノロジー領域において、「Tech Consulting」、「Tech Talent Services」、「Tech Academy」の3つのサービスを提供しています。テクノロジーと課題解決⼒を通じてスマートインダストリーの発展に貢献し、個⼈と組織がともに躍動できる社会の実現を⽬指しています。
ウェブサイト https://www.modis.co.jp

地方創生VIとは:
2022年1月時点で北海道から九州まで全国16の地域で活動を展開。普段は技術を用いて産業界の技術支援を行うエンジニアを中心としたチームが、地域で暮らす住民の方や行政職員と信頼関係を構築し、雇用・交通・教育・医療をはじめとする地方が抱える課題を地域住民と共に可視化し、誰ひとり取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる挑戦を行う。
ウェブサイト https://www.modis.co.jp/client/service/vi/sousei