小山市では「女性の活躍×デジタルトランスフォーメーションを推進するまち」の取り組みの一環として、小山市の住民の方々が実際にデジタルを活用して地域課題解決に向けた取り組みに挑戦している。
第1回目のイベントでは誰でもアプリが作成できる開発ツール「MIT App Inventor(MITアップインベンター)」を使うことで広がる可能性を探り、第2回目である今回は、実際に小山市の住民の方とともにアプリ開発に挑戦した。
第1回目のイベントレポートはこちら
参加していただいたのは、小山市在住の4組の親子たち。佐藤さんと息子のAさん(中1)、荒川さんと娘のBさん(小2)、小曽根さんと娘のCさん(小3)、石川さんと娘のDさん(中1)。子どもたちは緊張した面持ちでお母さんたちに連れられた様子で、最初は慣れない人たちに囲まれてぐずる場面も。
まずは石原氏からMIT App Inventorの使い方についてレクチャーをしていただいた。ハンズオン演習ではボタンを押したらメッセージが出てくる仕組みやウェブサイトを呼び出す仕組みづくりに挑戦した。
子どもたちはみんなプログラミングの経験もなく、英語も読めないため、最初は表情もどことなく少し硬い。しかし色で組み合わせを覚えてき、感覚的に操作しはじめると、どんどん画面に前のめりになっていく。少しずつ自分でできたことを積み重ねていき、自分にもできる!面白い!もっと知りたい!という表情に変わってきたのだ。
そして本日のメイントピックへ。「一人暮らしのお年寄りの困りごとを解決するアプリを考えてみよう!」というテーマのもと、親子でペアになり、アプリ開発に挑戦してもらった。どんなアプリがあったらおじいちゃんおばあちゃんが喜ぶだろう?と、親子で話し合う。お年寄りが何に困っていて、その解決には何が必要だろう?と親子で真剣に会話することは普段の生活ではあまり機会がなく、親子にとっても貴重なコミュニケーションの時間を過ごしているようだった。もくもくと親子で協力しながらアプリを作っていき30分後、4つのアプリが誕生した。
移動に必要な情報を集めたアプリ
まずAさんが開発したのは「移動に必要な情報を集めたアプリ」。アプリを開くと、「タクシー呼ぶ」、「ルート検索」などのボタンが並ぶ。ボタンを押すと目的のページにすぐアクセスできるようになっている。Aさんはプログラミング操作にいち早く慣れ、使いこなしている姿は周りの大人たちを驚かせていた。
生活リズムを整えるアプリ
Bさんは「生活リズムを整えるアプリ」を開発した。ボタンを押すと元気になる一言を言ってくれるアプリだ。例えば「けんこう」と押すと、「おさんぽいこう」と話してくれる。親子で「おじいちゃん、なんて言われたら嬉しいかな?お昼にはどんな声をかけてあげたら元気になるかな?」と会話していて、おじいちゃんの気持ちになって考えているBさんが印象的だった。
デイケアセンターの情報をボタン1つで呼び出すアプリ
Cさんは作成したのは「デイケアセンターの情報をボタン1つで呼び出すアプリ」。「おじいちゃんおばあちゃんはいつも何を見たいかな?」とCさんは真剣に考え、自分のおじいちゃんおばあちゃんをイメージしながら、デイケアセンターにすぐ連絡できるアプリを開発した。
地域で友達ができるアプリ
Dさんは「地域で友達ができるアプリ」を開発した。Dさんは「一人暮らしのおじいちゃんおばあちゃんは、一人でお買い物へ行くのは寂しいのでは?」と考え、アプリで今からお買い物へ行く人を集い、一緒に行くことができるアプリを作った。おじいちゃんおばあちゃんみんなにアプリをインストールしてもらい、買い物行くときにボタンを押し、みんなに通知がいく設定にした。
全体で3時間のプログラムであったが、子どもたちはお母さんと共におじいちゃんおばあちゃんの困っている姿を思い浮かべて課題を探し、解決策まで打ち出すことができた。
わたしたち大人は「子どもだけでは何も解決できない」と考えがちだが、実はわたしたちが想像するよりも子どもたちは地域課題を自分たちの視点で捉え、柔軟な発想で解決することができるのではないか。また、女性たちも子どもたちと共にMIT App Inventorを前にしてアプリ制作や課題解決に向き合うことで、自分たちももっと地域に貢献できることがあるのではないかと感じる時間となった。
子どもたちや女性たちが地域住民を巻き込み、MIT App Inventorという解決手段を取り入れて地域の課題解決を行っていく仕組みの可能性を大いに感じた時間だった。
自らが感じている課題解決に向けて、地域活動や起業などの行動を起こしている女性たちが多く暮らしている小山市。そんな女性たちやその子どもたちに、誰もが使える課題解決のためのツールが広まったらどんな地域に変化していくのだろう。様々な挑戦が連鎖的に生まれ、外からのリソースを呼び込む地域になる可能性がある。
第1回、第2回を通して地域住民が自発的に地域課題に目を向け、テクノロジーを活用して課題を解決できる可能性を探ることができた。次回以降も本テーマを深掘りしていく。
ゲスト情報
■講師
石原 正雄 氏
マサチューセッツ工科大学認定
教育モバイルコンピューティング マスタートレーナー