小山市をフィールドにした挑戦の可能性について語り合う場として企画されたイベント「小山市をフィールドに持続可能な開発目標(SDGs)の推進を考える」。第1回の小山市役所編、第2回の小山市民編に続き、第3回はワークショップをメインにした交流会が開催されました。
今回のテーマは、「小山市にはどんな課題があるのかを考えていき、何に取り組めば持続可能な社会づくりのための一歩目を踏み出せるのか?」を考えていくというもの。前回はポジティブにわがままを言える場が必要だという話が出ました。市民や企業がどんなことに我慢しているのか、本人たちですら気づかない我慢や、人には言えない小さなわがままが存在し、それを可視化することから持続可能な社会づくりがはじまるという話になりました。今回は実際に小山市に住んでいる方を想像し、その人々に秘められた“わがまま”を紐解いていきます。
ワークショップでは最初に、「小山市に住んでいる人々を想像してみよう」というテーマが提示されました。参加者はzoomのチャット機能を使用し、アイデアを出していきます。時短で働きたい女性、がん治療中で復職を目指している男女、コロナ禍でお客さんが来ない店舗の経営者、運転免許を返納した高齢男女、転勤で移住してきて知り合いがいない人、海外からきた留学生……と、続々と具体的な人物像が浮かんできます。
人にはそれぞれ歩んできた人生がありますが、そこで出会ってこなかった人にまで想像力を働かせることは容易ではありません。しかし、こうしてワークショップを通じて多様な人たちと一緒に考えを巡らせていく中で、より多様な背景を持った人を洗い出すことができました。次は、実際にこのような方々が抱えている悩みや“わがまま”を考えていきます。
まずは「ワンオペ育児をしている20代女性」がどんな悩みを持っているのか、みんなで考えてみました。美容院に行けない、自分の病院は後回し、学びたい、美容に気を使えないなど、男性だけでは思いつかないようなリアルな問題が多く挙がります。中には自らの具体的な経験を話してくれる方もいました。歯が痛くても歯医者に行けず虫歯が悪化したという話や、子どもが泣いてしまうのではと考えると、ひと目を気にして病院に子どもを連れていけないという話も。ここからのワークでは、持続可能な暮らしにするためにどんなアクションが必要なのか、全員で考えていきます。
参加者には多様な職種の方がいらっしゃって、それぞれの視点でのアイデアが挙がりました。移動への困難に対しては1メーター利用のタクシー、医療についてはオンライン診療などなど。また、本当に困っている人に利用してもらうには相談のハードルを下げ、サービスを知っていただく手段を探すことが、解決策につながるのかもしれないという声もあがりました。
次は、「転勤で移住してきて知り合いがいない方」について考えました。外に出ること、本音を話せる友人をつくること、配偶者の転勤についてきた方の場合はそもそも仕事をすることを諦めているのでは、という声が挙がりました。参加者の一人に、実際にご自身の仕事で小山市に転勤してきた方がいました。ご自身も最初は友人がおらず、会社から休日出勤の要請がある際に予定がなく、断る理由がないから会社に行っていたという過去があったそうです。こういった文脈では配偶者の転勤についてきた側で、多くの場合、女性に注目されがちですが、転勤になった当事者側の悩みも可視化していく必要があるかもしれません。
これらの声に対し、ゲーム制作会社に所属されている参加者の方がご当地ゲームの存在を教えてくれました。「岐阜クエスト」を例に挙げ、小山市からの情報発信がゲーム内で行われれば、より地域の情報がまちの人に届き、興味を持ってもらえるのではというアイデアでした。ゲーム制作をされているエンジニア視点の貴重なご意見をいただくことができました。
他にも、「夫の老老介護をしている80代の妻」「外に遊びに行けなくなった学生」でもアイデアを出し合いました。まちには様々な悩みや背景を持ったひとたちが住んでいます。SDGsは誰一人取り残さない持続可能な開発目標です。多様なまちの人たちと向き合い、多様な視点を持った人たちと協働していくことで課題解決につながるのではないでしょうか。
小山市役所の古川課長は、最後にこう締めます。「今日は通称“わがまま会議”。課題解決につながるヒントをたくさんいただくことができました。情報提供は市役所が推し進めなくてはなりませんが、それだけでなく対話の場をつくり、その活動をステップアップさせて地域のみなさんを繋げていける仕組みをつくりたいです」
全3回にわたって行われた「小山市をフィールドに持続可能な開発目標(SDGs)の推進を考える」本イベント。多様な市民・企業の方々にご参加いただき、回を重ねるごとに熱量が増す場となりました。
イベントによって出会えた方々、そして表に出てきた貴重な地域課題やアイデアを今後に繋げていけたらと考え、引き続き小山市をフィールドにSDGsを推進していきますのでぜひご注目ください!