栃木県全25市町にひとつずつ焦点を当てて開催する「栃木ゆかりのみオンライン」。今回は栃木県東部に位置する「那須烏山市」の様子をご紹介します。
参加者の方に那須烏山市のイメージを聞いてみると「正直、那須塩原と区別がつかないかも」という声があり、筆者も恥ずかしながらその程度の知識でした(汗)。
しかし一方では「那須烏山、めっちゃ好きなんです!何度も行っています」という熱狂的な方も。
知っている人には深く刺さっている、那須烏山市。とても気になってきました。
那須烏山市の何がそれほど人を惹きつけるのか?今日も地域の「中の人」たちに、いろいろと伺っていきましょう!
こんにちは!栃木ゆかりのみ主催者の永井です。今日は那須烏山市から佐藤さんと澤村さんのお二人にお越しいただきました!佐藤さんはゆかりのみを始めた頃からいろいろお世話になっていて、いつもありがとうございます。まずはおふたりの自己紹介をお願いします!
那須烏山市の佐藤です。出身は旧烏山町。大学卒業後、地元をもっとおもしろい場所にしたいなと思って旧烏山町役場に入庁しました。那珂川町の露久保くんとは大体同じくらいに入庁して、同期のようなもんです(笑)
那須烏山市の澤村です。今はなき烏山女子高(※)最後の卒業生で、それから短大を出て市外で働いていました。でもやっぱり地元が好きだなと思って、帰ってきて市の職員になりました。 ※烏山女子高は烏山高校との統合のため2010年3月に閉校。
澤村さんが地元に帰ろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
後ほど詳しくご紹介したいのですが、「山あげ祭」を見るために働き始めてからも毎年欠かさず帰っていたんです。それで実は地元のこと好きなんじゃないかって気付いたのがきっかけですね。
そんなに熱いお祭りがあるんですね!どんなお祭りなのか聞くのが楽しみです。では、那須烏山市の基本情報を教えていただけますか?
那須烏山市の人口は約2万6000人、面積は約174平方キロメートルです。JR烏山線が通っていて、宇都宮からだいたい60分程度。市内移動は車です。産業は主に農業と製造業で、製造業では車やカメラの部品を作っている企業が多いです。
那須烏山市は県北というか県東というか、栃木県内でも奥まったところにあるので、奥ゆかしいというか……プロモーションが苦手な地域性がある気がします(笑)。
私自身も那須烏山市の情報に、あまり出会ってきていないかもです。
個人的な印象ですが、やっぱりそう感じますかね。でも、知っていくとだんだんハマってしまうディープな魅力があるんですよ。
一年かけて作り上げる「山あげ祭」
先ほど澤村さんが地元に帰るきっかけと話していた「山あげ祭」とはどういうお祭りなのでしょうか?
山と歌舞伎の舞台を設置し、野外で歌舞伎を上演するお祭りです。山とは、竹でできた骨格に和紙を貼り付けて山水の風景を描いた「はりか山」というもので、いわゆる舞台背景です。この山や舞台はすべて町の人が制作・設置し、歌舞伎の演目も地元の小学生や大人たちが中心になって行います。歌舞伎のユネスコの無形文化遺産にも登録されていて、外国人観光客やリピーターも多いですね。
なぜリピーターが多いのでしょうか?
お祭りの特徴として、市内の6つの町が順番に当番町を務める輪番制というものがあります。それぞれの町ごとに舞台や仕掛けが違うので、毎年違ったものを見られるというのが一番の理由だと思いますね。
澤村さんは山あげ祭のどんなところが好きで毎年帰られていたんでしょうか?
この3日間にかける熱い思いが見られるところですね。毎年7月のこのお祭りのために、地元の人たちは山を作ったり稽古をしたりと、丸一年かけて準備をします。当日は男泣きを見ることもあって、見ている方も熱くなりますね。
伝統的な農民歌舞伎などを今も続けている地域はありますが、これだけ大規模な移動式のものとなると、なかなかないような気がします。
★山あげ祭HP:https://www.nasukara-yamaage.jp/index.php
厚紙の至宝「烏山和紙」
山あげ祭の山にも使われているのが、特産の「烏山和紙」です。自然豊かな烏山の環境が和紙の原料となる楮(こうぞ)という植物の栽培に適していたので、ここで和紙づくりが始まりました。
山あげ祭にも使われているということは丈夫な紙なのでしょうか?
そうですね。楮の繊維はとても強靱で丈夫なため、烏山和紙は「厚紙の至宝」と呼ばれています。障子やランプなどの生活用品や賞状などによく使われています。
小学生の頃に和紙の手漉き体験をしたことがあります。
手漉きの体験も人気ですね。
★烏山和紙会館HP:http://www.fukudawashi.co.jp/ 手作り体験教室はこちら:http://www.fukudawashi.co.jp/publics/index/44/
市の一押しスポット「洞窟酒蔵」と「龍門の滝」
私がぜひおすすめしたいスポットが、「島崎酒造」さんの洞窟酒蔵です。大吟醸を貯蔵しているこの洞窟は、戦時中に戦車の製造のために掘られたものなんです。洞窟の中は年間を通して平均10℃くらいの温度になっていて、真夏でも中に入ると寒いくらいなんですよ。
洞窟でひんやり冷えた日本酒が飲みたい……!!
洞窟の中にバーが併設されているので飲むこともできますよ!
洞窟を探検しているみたいでワクワクしますね!
★島崎酒造HP:http://azumarikishi.co.jp/
那須烏山は自然も豊かです。「龍門の滝」は高さ約20メートル、幅約65メートルの大滝で圧巻。
滝のすぐ上にJR烏山線が走っていてすごくいい写真スポットです。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪と一緒に楽しめますよ。
たくさん見所があって、自然と文化と歴史のまちだと思いますね。
★那須烏山市HP 龍門の滝: http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/index.cfm/9,1350,40,html
ディープでユニークなお店たち
観光地に加えて、最近はカフェなどのお店も増えていると聞きました。
すごく増えていますね。コーヒーだけでなく、近年ではコッペパン専門店がオープンしたりとか。
起業は主に若い方がされているんでしょうか?
若い方もいますし、勤め上げて退職後に始める方もいます。
あえて那須烏山でというのは、やはり観光客が来るのを見越してですか?
どうですかね。私だったら首都圏に近い県南のほうが起業しやすいと思うんですが(笑)。でも土地柄、古民家もたくさん残っているし、地域のつながりが残ってるわりには閉鎖的ではないし、インターンみたいに一度やってみてそのままここで始めてみようかなという方が多い気がしますね。
生産地と消費地が近いんじゃないかな。特産品の「中山かぼちゃ」や、果物はさくらんぼとか梨とか、いろいろあるから。作る農家・使うお店・消費する人のバランスがいいんじゃないかなと思います。那須高原にも隣の茨城にもすぐ行けて、アクセスもいいですしね。
昔からあるユニークなお店も多いです。たとえば「五十番」さんは長く地元民から愛される中華料理屋さんで、ラーメンは400円。こういう地域のお店が元気で、チェーン店がそこまで多くないのもいいですね。若いうちは不便に感じるかもしれないけど、ここにしかない良さに気づくと、那須烏山にハマっちゃうと思います。
すごく良いお話が聞けました。最後に参加者の皆さんから感想をお願いします!
・那須烏山市、行かなきゃ!という気持ちになりました。いい意味で謎が深まったというか(笑)聞いてわかった気になれない、これは現地で体験しなきゃいけないぞと。コロナ禍が落ち着いたら絶対に行ってみたいです。 ・こんなにかっこいいお祭りが栃木にあるなんて知らなかったです。 ・那須烏山はなんだか雰囲気が合うな、行ってみたいなという思いが強まりました。 ・何度も行ったことがあるのに、こんなにディープなところだとは知らなかったです。
私も、那須烏山の「ディープさ」がだんだんわかってきた気がします……!見て終わり、聞いて終わりじゃなく、お祭りもイベントも地元のお店も、実際に体験して肌で感じてみたいですね。
ディープな魅力はなかなか伝えるのが難しいですが、みなさんそれぞれに那須烏山市への思いを持っていただけて嬉しいです。まだまだたくさん伝え切れていない魅力がたくさんあるので、落ち着いたらぜひ遊びにきてください。
話してみて、いちばんのPR下手は自分だと感じました(笑)。みなさんにいただいた反応やご意見をこれからのまちづくりに活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
筆者あとがき 「PRが苦手」とありましたが、声高に宣伝するよりも那須烏山に住む人・来る人が自然と深くはまっていくような、そういう雰囲気の魅力がありました。 歌舞伎や和紙などの伝統的な日本の文化が、那須烏山市のオリジナリティやディープさの中で育まれていて、知れば知るほどおもしろい地域でした。 私もみなさんと同じく、那須烏山市に実際に行ってみてディープさを存分に味わいたいです!